TAKU氏の事件簿

タクシー車内で繰り広げられるドタバタ劇

哲学する夜 2015.9.25

タクシードライバー TAKU氏の事件簿
【新宿 → 新井薬師前

吾輩はタクシードライバーである。
時に「常識」とはなんなんだろうと哲学する夜もある。

雨降る新宿。
日が昇るまで時間があり周りはまだまだ真っ暗。
区役所通りを走行中、
左側から違法駐車の隙間からスッと出てきて
手を上げる女性。
強引なタイミングに危ないなと思いながらも車を止める。

女性の後ろには恰幅の良い男性。

「もう飲みすぎなんだから気を付けてよ?!」
「大丈夫だ、もうこんな店こねぇから!ガハハハハ!」

憎まれ口をたたきながら男性のみ乗車。

新井薬師前まで行ってくれ」

すぐさま車を走らせる。

新井薬師前に向かうには職安通りを左に曲がる、
もしくは職安通りにぶつかる少し前にある
斜め左に曲がる道がある。

その左斜めに入口付近には二人の通行人が
邪魔になっていて入りづらい。

それに対し青信号に余裕で間に合うと判断し、
左斜めの道をあきらめ、まっすぐ進み職安通りを
左に曲がった。

後部座席から声がかかる…
「兄ちゃん、新宿はよく走るのかぁ?」
「はい、そこそこ走ることあります」
「なんで!斜め左の道に入らなかった?」
「人が…」

説明しようとする声をさえぎり男性は言う
「俺は別にいいんだが…青信号だったからいいんだが
左斜めの道があったろうなんで入らなかった?」

「あのと…き…」
またもや声をさえぎられ男性は言う
「別にいいんだが、青だったからいいんだが、
なんていうか常識だと
あそこは早く行くために9割方が左斜めに入るだろうが」

「ひと…が…」 三度さえぎられる
「別にいいんだが、タクシーとして少しでも早く行こうとする
やる気が無いっていうのか…」

…その少しでも早く行くためだったが
話を聞いていただけない (ノД`)・゜・。

別にいいんだが…と前置きしながらも
同じ話を繰り返し。
段々とヒートアップするお客さん

「出身はどこだ?」「岡山です」
「じゃあ東京の道なんかよく知らねえだろう」
「そうですね、分りづらい所もたくさんありますね」
「わかりづらいじゃねえよ、プロだろ?」(゚Д゚)ノ ガ~
「すいません…」(+o+) ソレヲイワレルト…
「ナビなんかより俺の方がよく道を知ってるぜ、
白山通りなんか混むが俺が走れば抜け道を走ってすぐだぜ?!」
「すごいですね、車関係のお仕事か何かをされているんですか?」
「馬鹿か?!地元だよ!!!」
「すいませんでした…」 (。-`ω-) シランガナ…
「すいませんでしたじゃねぇよ!」( `ー´)ノ ガミガミ

何を言っても怒られる吾輩。(;一_一)

分かれ道に差し掛かり確認の為に声を掛ける
「どうしましょう。ここはまっすぐ向かいますか?」

「右に曲がってくれ!」「かしこまりました!!!」

より機嫌悪げな声がかかる。
「おい!兄ちゃん。なんでまっすぐで行こうとした?」
「いえ、みち…(の確認をさせていただいただけです)」
またもや遮られ最後まで話せない… (*´Д`) ア~

「お前プロだろ、なのに自信満々でまっすぐにいって
遠回りしようとした?!」

(´゚д゚`) えっ?なんでそうなるの?自信満々?
遠回りにならないようにと分岐前で確認取っただけなのに…

始終何かがかみ合わない…(ノД`)・゜・。

「お前俺が酔っぱらってるからってわざと遠回りしようとしてるんだろう?わかった!会社に連絡しろ!言ってやる!
会社に弁護士いるだろう?言ってやるよ!俺が勝つに決まってる!」 (◎_◎;) ハナシガ オオキクナッテル~!

「すいません、そんなつも…(りは、全然ございません)」
「すいませんじゃねぇ~!」<(`^´)>
「はい…」 (ノД`)・゜・。
「はいじゃねぇ~!」 <(`^´)>
「……」 (@_@。

なんだかんだで「そこに止めろ!」と、家の前に着く。
男性は言う。
「俺は構わねえ。今からお前の会社まで行け!」

何度も謝り、お伺いを立てる。
「本当にすいませんでした。どうかお許しいただけないでしょうか?」m(__)m

フンッと男性。<(`^´)>
「お前、俺が酔っぱらってるからって覚えてないんだと考えてるんだろ?酔っぱらってても結構覚えてるんだからな?」
お釣りを渡すと同時に吐かれた捨て台詞。

鼻息荒く出ていく男性。その場所に残される黒いかたまり。

財布だ!Σ(´∀`;)

「お客さん、財布、財布、財布~忘れてます!」(;´Д`)

始め無視されていたが、
何度も連呼したすえようやく財布の単語が
男性の耳に届く。

「ぁあ…、これがないと大変な所になる…所だった…」
バツの悪そうな男性。滑舌悪くなる口。
男性の去っていく姿を見送りながら、吾輩は一人思う。

捨て台詞は覚えていても、
財布は忘れていくんですね…
それがあなたの常識なのですね…(。-`ω-) フム

夜明け前、水滴がたまる窓の先には
まだまだやみそうもない雨が
シトシトと降り続いていた…。

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