TAKU氏の事件簿

タクシー車内で繰り広げられるドタバタ劇

【 三軒茶屋 → 柏市編 】 <後編> 2015.9.20

タクシードライバー TAKU氏の事件簿
三軒茶屋柏市編 】 <後編>

前回の簡単な振り返り

タクシーにとって稼ぎ時である金曜の夜。
三軒茶屋で乗ってきたのは、ベロベロの若い男性。
目的地は千葉県柏市
所持金はしわくちゃの千円札一枚。
酔っていて会話もままならない。
ナビ入力の為、住所を聞き出そうとしている最中に
何度も眠りの世界へ飛んでしまう有様。
そんな中なんとか住所を確認、
足りない支払い分は自宅に着いたら
持ってくる事を約束。
そしてようやくアクセルを踏み込む。
事のやり取りがこれから始まる
序章だったとゆう事を知る由もなく…

目的地は反対方向だった。
適度な場所でUターンをかまし千葉へ向かう。

お客様の了承を得ていた高速道路を使用し、
東京の深夜の夜をスピードを上げて駆け抜ける。

長い長いドライブの末、
目的地のマンション前に到着。

稼ぎ時の金曜の夜。少しでも早く支払いを済ませ
都内に戻るためにお客様に声を掛ける。

「着きましたよ!」 (-_-)zzz
「起きて下さい!」 (-_-)zzzz…
「今、柏市東中新宿ですよ!」 (-_-)zzzzz…

ことごとく寝息で返される、
ラチがあかないままに無常に過ぎていく時間。

携帯を取り出し110番。GPS反応音が鳴った後に聞こえる声。
「…事件ですか?事故ですか?…」
「…酔っ払いです。起こすのを手伝っていただけますか?」 

…お巡りさんの到着を今か今かとひたすら待つ。
ハザードがチッカ、チッカ…。
男性はスゥ~スゥ~…。
暗闇の中、白けゆく吾輩の心。

今の状況をあざ笑うかのように
目の前を通り過ぎるネズミらしき黒い影…。
貴重な週一番の稼ぎ時タイムがいたずらに過ぎていく…。

二人のお巡りさんが到着。
男性の体を揺すり、声を掛ける。

低く、不機嫌な声が響く… 「んっ?だよぉ~お前は?」
「警察ですよ。起きて下さい。家についてますよ!」
「んな事、知らねぇよ。もうちょい…、もぅちょいだからぁ」
体をひねり縮め、眠りなおそうとする男性。

「とりあえず起きて!お兄さん!運転手さん困ってるから」
「知らねぇって言ってんだろ!うぁ~、なんかムカついてきた、
お前誰だ?俺様に話しかけるなぁ、お前はダメだぁ!」

選手交代。若い方のお巡りさんが声を掛ける。
「お兄さん。タクシーから降りられますか?」
「ん~…、まだあんたの方がいい。それじゃお休み…」
(´゚д゚`) イヤマテ、ナゼネル オキャクサン…

時間が過ぎるドンドン過ぎる、
ドンドンたまる苛立ち。

ようやくタクシーから降りる気になったお客さん。
財布を開く。
「あれ~?無い…?…おいっ運転手ぅ、取ったのかぁ?」
「そんなこと運転手さんがする訳ないでしょ、
カードとかないのお兄さん?!」
「カード?カードは~無い。そんな~ものは無い~!」
(´゚д゚`) ナゼ イバル オキャクサン…

「それなら自宅になら現金かカードはあるのかい?」
「は~?誰に言ってんだ!バカにしてんのあんた?
あるに決まってんだろぉ~!」
「じゃあ、玄関までついていくから取りに行こうか」
「おぅ~!じゃあついてこいよ!」

トボトボとふらつく男性の足取りに、
同行するお巡りさん。

一人取り残されポツン…としてる中、
無常に鳴り響くハザード音。
やり場のない怒りと悲しみが車内に充満していく丑三つ時。

戻ってきた男性は、なぜか怒り興奮していた。
「おぃ!運転手!車出せ!この先にコンビニがある!
そこまで出せ!」
急な展開に戸惑いながらも返事する。
「また新たに料金が発生しますがよろしいですか?」
「何?なめてんのお前!なにが料金が!だ。
なんで余計な金を払わないといけないだ!」
(´゚д゚`) オイ、オイ、オイ…

「お兄さん、タクシーなんだから乗ったら
その分料金かかるでしょ?」お巡りさんが仲介に入る

「そうなんでまた乗られるなら料金追加をお願いします」
「なにがそうなんでだ!大体その顔が信用ならねぇ
メガネなんてかけやがって!」
(゚Д゚;) ナニイッテヤガルノカ ワカラネエゾ コラ?

「どいつもこいつもふざけやがって!タクシーなんかに
乗らねえからコンビニまでついてこい!」
(。-`ω-) アナタガ イチバン フザケテマスヨネ?

警察二人に同行され怒鳴りながら
コンビニ入っていく様子を見ていた
缶コーヒーで一息中の
見知らぬ個人タクシーに声を掛けられる。
「なんかすごい怒ってたけど酔っ払い?大変だったね」
(´Д⊂ヽ ハイッ タイヘンダッタンデス、モノスゴク…

一万円札を二枚握りつぶしながら男性が戻ってくる
「いくらだ!」
「高速代込みで16900円になります」
「なんだとなにが16900円だ、ぼったくりやがって
まっすぐここまで帰ってきてなんでそんなにするんだ?
どうせ遠回りしたんだろうが?」
「会社に文句言ってやる!名刺出せ!名刺を!」
「すいません、今持ち合わせがなくて…」

「はぁ~、名刺がないだと会社員なら名刺が当然あるだろ!
文句いってやるから会社の番号を教えろ!」
「会社の番号なら領収書に書かれていますのでそちらで
確認をお願いします」
「い~や、なにが領収書だ、信用ならねぇ!そのメガネも
信用ならねぇ、早く名刺を出せってんだ、名刺だ!」
( 一一) イヤ ダカラ メガネ カンケイナクネ…?

状況を見かねたお巡りさんが男性に声を掛ける。

「タクシーは名刺持ってない人もいるよお兄さん。会社の番号を知りたいなら運転手さんも言ってるように領収書に書かれているのだから、そこにかけたらいいよ。それとぼったくりぼったくりといってるけど、いつもならどの位の料金で帰ってきてるの?」

「いつもの料金?。いつもなら1万7、8千で帰ってこれるのに
こいつの料金、ぼったくりだろが?」

(。´・ω・)? 思わず固まるお巡りさんと吾輩…

急に冷静な思考に戻ったらしく、
言葉の勢いが急激に弱っていく男性。
「16900円…?あれ?安い…?」
これまでの鬼の形相が、愛想笑いにみるみる変わっていく。

「あっ、はい…運転手さん。支払いお願いします…」
「おっ?お兄さん、酔いが冷めてきたようですね」
お巡りさんに声を掛けられ恐縮していく男性。

かくして長くに渡った理不尽な時間は終末を迎えた。
失われた多大なる時間、多大なる暴言、多大なる心労を残し
柏市東中新宿を去っていく吾輩であった…。

(´Д⊂ヽ アァ~ セッカクノ カセギドキ ダッタノニ~…

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