トレイの上に出されたのは20円… 2016.5.7
■■■ タクシードライバー TAKU氏の事件簿 ■■■
よろけていたその男が
ふいに振り向いた
上げた腕がフニャりとしていた…
ドアを開け どうぞと声をかける
男はクルっと後ろを向き、
「○かやろ〜!」と
叫び 乗り込もうとした時
車内に響く ガンッ!と大きな鈍い音
「光が丘まで〜」
まるで何事もなかったかのように
淡々と目的地を告げた
…………
「光が丘駅がもうすぐですが、
どの辺りにお停めしましょうか?」
バックミラーに見えないお客さま
信号待ち 反応がない座席をのぞくと
微かな寝息で上下する横倒れの身体
何度繰り返しただろう
全ては微かな寝息に
かき消されてしまう呼び声
らちがあかない…
ダイヤル「1」「1」「0」
状況を伝える…
電話から聞こえる
「ハザードを付けてお待ち下さい」に
「よろしくお願いします」と答えしばし待つ
数分後
自転車に乗ったお巡りさんの姿が見え
車のそばに立ち顔を向ける
…が、スッ…と横断歩道を渡って
遠ざかっていくお巡りさん
別件か…?
( ´ー`)フゥー...まだ来ないのかと
車外からお客さまに声をかけていたら
先ほどのお巡りさんが近づいて来て
「声をかけてくださいよ(・へ・)」
(゜o゜) へっ…?
ハザード付けて
車の色も伝えていて
それらしいお巡りさんが近付いてくるので
車のそばで待っていたのに…
それを急に方向転換して
違う方向に行かれたのは…(¯―¯٥)
なにはともあれ…
今は後部座席の件を何とかしないと…
軽くキレ気味?のお巡りさん
男性の体を揺すり、
ガンガンと声をかける
半眼で「チョチョチョチョ!」
「チョチョチョチョ!」と答える男性
寝ぼけてるのか
慌てているのか
よく分からない…(;´Д`)
軽く意識が戻ったようなので
料金金額を伝えると
「降りる !」と一声 ドアを開ける
「お客さま、お支払いを!」と言うと
サッサと降りてしまい
バタン!と激しくドアを閉め
お巡りさんに
すぐさま止められ 座り込む
ドアを開け「お支払いを」ともう一度伝えると
「一旦降りてから払うだけだろうが!」
バタンとまたもや激しく閉められるドア
……(¯―¯٥) アアァ
今はこのキレ気味のお客さんの相手は
これまた 少しキレ気味のお巡りさんに
任せるしかないと、待つこと少々…
状況がわかってきたのか、
急に言葉遣いが丁寧になって
声をかけてきたお客さま
「あの、いくらですか?」
「2620円になります」
「じゃあこれで…」
トレイの上に出されたのは20円…
まだ…寝ぼけているようだ…
(¯―¯٥) ゼンゼン タラン…
「あっ… えっと…」数秒戸惑う吾輩 (ーー;)
足りない事に気付いたらしく
カバンの中をこれでもない
それでもないと
かきまわし札入れをようやく取り出した男性
3000円をトレイの上に出してきたので
レシートとお釣りを渡し
ヤレヤレとようやくついたこの決着
この場から光のごとく離れたいと
アクセルを踏み走り出した
光が丘の日の出前