たれしたたるは 2015.10.11
タクシードライバー TAKU氏の事件簿
「1900円になります」
目的地 告げる料金。
「あ~ちょっと待って」と一言と共に
コイントレーに乗せられた万札束。
(◎_◎;) 「えっ???」声を失う吾輩。
驚くあまり、ビクッと跳ねあがる身体。
ま、万札はと…目をむける先はコイントレー。
あれれ?と一生懸命辺りを見渡す吾輩の口の端から
たれしたたるはひとすじのヨダレ。
それは仮眠から目覚めたタクシーの中
一人虚しさ漂う悲しき夢物語。
【中目黒 編】
曇り空、パッとしない星空に、
パッとした売り上げが出ないある平日の夜。
中目黒駅に差し掛かろうとしたその時
突如パッと現れた二人組。
逃すものかと物陰から走りだし道路に出てきた女性。
その後続くは酔い加減 出来上がり完成の男性。
口開く男性。
「最後はずっとまっすぐ行くから。
まずこの先のTSUTAYA前に止めて!」
反対車線にある最初の目的地。
「つ…TSUTAYAですか?
最後はまっすぐ行かれるのに、途中でUターンしないと
行けませんがよろ……」
遮られる言葉
浴びられる言葉。
「とにかく早く行けよ!TSUTAYAだ!」
その言葉、言い終わるタイミングで
追い抜かれ真ん前で停まる他社タクシー。
仕方なく右から追い抜きかけると
頭上から見下ろす
黄色→赤へと変わる3色3つ目。
止まらざる得ない状況。
車内に響き渡る大きな独り言。
「TSUTAYAって言えば行けばいいのに
出発してすぐ止まりやがるなんて信じられるか?
5mも進んでないんだぜ?行けと言ったら行く。
これがセンスってもんだろ?俺なら行くね!
センスね~わこの運転手。なぁお前も思うだろ!」
(;一_一) ソレハ センスト イワヌ。タダノ イハンダ! シンゴウムシダ!
「口が悪すぎるよ。止めなさい」
なだめる女性。
「センスないわ~」を3色3つ目が赤くにらんでる間
ひたすら繰り返す男性。
湧き上がる思いを抑えおさえ
独り言にセンスない男性 TSUTAYA近くで降ろし、
女性を降ろし、気持ち新たにアクセル踏み込む。
パッと売り上げが上がらない夜、
パッ パッ パッ と込みあがる怒り、
パパパンと往復ビンタしたい衝動を
パンパンと堪忍袋に押し込んだ下弦の月照らす中目黒の夜。
※物語は事実を元にしたフィクションです
